No.17 メインにも付け合せにも「ほうれん草の粒マスタード和えサラダ」

すっかり夏になりました!
わたしの街のファーマーズ・マーケットもようやく再開、週ごとに増える野菜たちとの生活を楽しんでいます。

この「マーケットの始まりの時期」によく出会うお野菜が、ほうれん草

冬の寒さにあたったほうれん草は言うまでもなく甘くて美味しいですが、初夏のやわらかなほうれん草も、また美味です。

サラダ用のシュウ酸が少ない品種はパッケージに入って年を通して売られていますが、土で育ったしっかりしたほうれん草は、やっぱり食べておきたいところです。

ご存知の通り、栄養価が高いことで知られる「健康野菜」の代表格のようなほうれん草
たっぷり含まれるβカロテンには抗酸化作用があり、抗がん作用や免疫を活性化させる緑黄色野菜としても知名度はバツグンです。

また、βカロテンは体内でビタミンAとなって髪・目・皮膚の健康を維持し、呼吸器系統をも守ります
根の赤い部分にはマンガンが含まれるので、全体を通して含まれているカルシウム&マグネシウムといっしょになると、とっても有益です。

しかしながら、ほうれん草にはシュウ酸が含まれているので、湯がいて取り除く必要があります。

シュウ酸は「灰汁(あく)」と呼ばれる水溶性の成分(注1)です。
水溶性ということで、湯がくことで8割がたを減らすことが可能です(注2)。

今回は、湯がいたほうれん草に、これまた緑黄色野菜としてよく知られる人参をプラスしたお料理をやってみます。

ほうれん草のお供をするのは、最近になってアメリカではかなりメジャーになった「カラー人参」
「Rainbow Carrot」などの名前で見かけるようになりました。

中でも「紫人参」は、アントシアニンを色素に持ちます。
これはあのブルーベリーや紫キャベツと同じもので、同様に強い抗酸化作業があります(注3)。

今回作るのは、この紫人参&ほうれん草の「抗酸化作用ペア」で作る、初夏らしい茹で野菜のサラダです。

βカロテンの吸収には欠かせない油分も、しっかり入れます!!

材料はこちら。

材料<2人前>

  • ほうれん草・一束
  • 紫人参(普通の人参でもOKです)・1/2本
  • 粒マスタード・小さじ3
  • オリーブオイル・大さじ1
  • 胡椒・適宜
  • ・(人差し指+中指+親指で)3つまみ

道具

  • 大きなボウル(できればふたつ)
  • 中くらいの鍋
  • タオル(フェイスタオルやハンドタオルなど)
  • ざる
  • 計量スプーン
  • トングや菜箸

アメリカのほうれん草はこうやって、葉っぱだけ摘みとったものを売っていることがよくあります。
もちろん、束でも売っていますが、以外に見かけるのがこの「葉っぱだけ」のスタイル

この写真で約一束くらいあります。

まずは鍋に水をたっぷり入れて火にかけます。
お湯を沸かす間に、ほうれん草を洗っておきましょう。

ボウルに水を張って、しっかり洗ってやります。

洗った後、5分くらいそのままボウルの水に漬けて水分を補給してやります
こうすると、湯がいた後のみずみずしさが違うのです。

根付きのほうれん草の場合、大きな根には2センチくらい、縦に切り込みを入れてあげます

人参はピーラーで薄く皮をむきます。

お湯には塩(分量外・お湯1.5リットルに対して小さじ1ほど)を入れ、まずは人参を茹でます。

人参の太さにもよりますが、かためで3分、ほどほどで5分、柔らか目で7分くらいです。
茹で加減を確かめるには、トングなどで取り出して、端っこを切って食べてみます。

そして「もう少し茹でたい」と思うところでお湯からあげ、ざるやボウルにのせてそのまま冷まします(注4)。

お次は、ほうれん草。

茹でる順番は、間違えないでくださいね。

ほうれん草を湯がくことでシュウ酸がお湯に溶け出すと、それ以上は使えません。
なので「人参が先でほうれん草が後」なのです。

一度に詰め込んで、葉っぱが折れたり、お湯の温度が急に下がって上手く湯がけないことがないよう、ほうれん草は多かったら2度に分けて湯がきます

根付きの場合は、根っこを入れてまず20〜30秒を手で支えながら「立った状態」で茹でます
その後、菜箸やトングを使い、葉っぱまで全部を沈めます。

ほうれん草を湯がくタイミングはなかなか難しいですが、基本的には「湯がく」です。「茹でる」ではありません

つまり、グツグツするのではなく、煮立ったお湯に沈めた後は2回くらい上下を返したら、もうOKなのです(注5)。

時間にして、長くて30秒くらいでしょうか。

湯がき上がったタイミングの目安になるのは、茎の透明度です。
茎が半透明になって、全体が綺麗な緑色になったら、すぐに引き上げてボウルで水にさらします。

この時はたっぷりと流水をあてます
時には全体を手で返してやり、全体が素早く冷めるようにします。

こんな風に、茎が透明になっていたら、湯がき上がっています

5分ほどチョロチョロと水を流しながら冷ましている間に、ざるにタオルを敷いておきます(注6)。

冷めたほうれん草を、少しずつ手にとって軽くしぼります。
絞り過ぎるとカスカスになって美味しくないので、ほどほどに絞るのがコツです。

根付きの場合は根を上に持って上から下へ何度か軽く絞り、葉っぱだけの場合は片手にとった葉っぱに上からもう片方の手をそえてそっと握るように絞ります

軽く絞ったら、タオルの上に広げ、軽くほぐして水気を切ります。
余分な水分をタオルが吸ってくれるので、後の作業が楽になります。

ほうれん草を水切りしている間に、冷めた人参を薄い輪切りにして行きます。

ほうれん草はもう一度軽く水気を絞って、ざく切りに。

野菜たちをボウルに入れ、粒マスタードと塩&胡椒を入れたら、オリーブオイルを入れます。

そして、全体を手でよく和えたら、出来上がりです(注7)。

輪切りの人参とほうれん草はなじみにくいので、ほうれん草をほぐすようにして、全体がよく混ざるように仕上げます

お好みで塩気が足りなければ塩を、酸味が足りなければレモン汁やヴィネガーを少々、足してあげてください。

時間が経過すると粒マスタードに含まれるお酢によって、ほうれん草の色が少し悪くなりますが、食感やお味には問題はありません

この「変色」があるので、仕上げるのはいただく直前がベターです。

このままサラダとして食べてもOKですが、お肉やお魚料理の付け合せにもなります。

残ったらスープやカレーの具材にするもよし、細かく刻んでパスタ+お好みの調味料と和えて、パスタサラダに進化させることもできます。

ほうれん草でなければできないのかというとそうでもなく、スイスチャード、小松菜、水菜、青梗菜など、クセのない青菜なら何でも合うと思います。
キャベツの外葉なんかも合いそうですね。

要は「粒マスタードで湯がいた青菜を和えたもの」と考えると、幅広く使えるレシピです。

暑さを感じる日も多いこの頃、酸味のあるサッパリしたサラダはメニューに取り入れやすいと思います。
緑黄色野菜をたっぷりとって、本格的な暑さにそなえましょう!


注1
シュウ酸はカルシウムの吸収を阻害したり、体内でカルシウムと結びついて結石の原因になったりもします。
しかしながら、結石などの持病を既にお持ちの方でしたら意識する必要がありますが、そうでない場合は「生で1kg食べる」などの常軌を逸した食べ方をしないかぎり、普通に食べて大丈夫です。シュウ酸については湯がくとよりいっそう安心なので、おすすめです!

注2
シュウ酸がお湯に溶け出すので、湯がく時のお湯はたっぷりと。
湯がいた後のお湯に色がつきますが、これがシュウ酸です。

また、湯がいたものを水にさらす時は、ただパシャパシャかけるのではなく、しっかりと流水を使います。
急速に温度を下げることで、綺麗な色を保てます。

注3
抗酸化作用が強いということは活性酸素に対抗する…ということで、結果的にアンチエイジングにも役立ちます。
眼精疲労の予防や、視力の維持&向上にも一役買います。

アントシアニンはポリフェノールの一種です。
紫人参は、通常の人参と比べて約10倍ものポリフェノールを含むそうです。

注4
水にさらさないので、余熱で火が入ります。
そのため「もう少し茹でたい」というところで止めるのがちょうどよいのです。

注5
葉っぱが柔らかい場合は、1回の天地返しで十分です。この場合、10秒程度でしょうか。

注6
ほうれん草の色素がついてしまうので、汚しても構わないものを使ってください。ふきんではなくてタオルです。あのループが、とってもいい仕事をします。

わたしは写真の通り、色がついても目立たない、濃い目のベージュのものを使っています。

注7
調理器具ではなく、手で和えてあげてください。
そうすることで全体がよく混ざりますし、混ざり具合もすぐにわかるので仕上がりのタイミングを読みやすいです。