No.9 可愛くて美味しい「ビーツのヨーグルトサラダ」
真冬のマーケットには、基本的に保存野菜が出回っていることはお話した通りです。
その代表格が根菜なのですが、かれらは夏から初秋までに収穫され、低温保存されていたものです。
上手に保存されたものは栄養価が失われることはありません。むしろ、いも類などはねかせたことで味わいが濃くもなります。
その根菜たちの中でも、近ごろ栄養価の高さから注目されているのが「ビーツ」です。
よく知られている「赤ビーツ」をはじめ、「黄ビーツ」「チョギア・ビーツ(ピンクのシマシマのもの)」などがありますが、マーケットでよく見かけるのは「赤ビーツ」。
シーズン中には葉っぱ付きで売っていますが(注1)、保存してあるものは葉っぱを落としてから保存しますので、実の部分だけで売られています。
栄養素として多いのは細胞の生まれ変わりに必要な「葉酸」、むくみ対策や高血圧対策にバッチリの「カリウム」が多く、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンEなども含まれます(注2)。
また、近年に注目されている「NO=一酸化窒素」のもととなる「NO 3=硝酸塩」が豊富に含まれていることでも有名です(注3)。
この「NO」は血管を柔らかくして血流をスムーズにし、コレステロールがたまるのを防ぎ、血栓の発生を防ぎます。
このことから「血流が良くなる」という効果が期待できるので、ビーツのジュースは「飲む輸血」とも言われています。具体的には、美肌効果、肩こり・冷え・クマの改善に良いとされます。
ジュースにする他、茹でて、または生でサラダに(注4)、スープに入れたり(注5)、オーブンでローストしたりで食べられますが、とにかくかたいので、加熱調理には時間がかかります。
夏場の水分をたっぷり含んだもの(葉付きの実など)はオーブンでゆっくりローストすると皮がツルッとむけますが、冬場の保存品は水分がやや抜けているためになかなか簡単には行かないので、皮ごとまる茹でする方法がおすすめです。
皮をむくとそこから栄養素が煮汁に出てしまいますので、皮ごと下ごしらえします。
下茹での時間は実の大きさにもよりますが、小一時間ほど。
少しかたいかな、という時点で火を止めて、煮汁ごと冷ましながら予熱で火を通します。
味付けのコツは、ビーツのもつ独特の匂い「土臭さ」を消すことです。
酸味や乳製品と一緒にするなどで対応できます。
では、今回はこのビーツを使って、色合いの可愛いサラダを作ってみます!
今回の材料はこちら。
ビーツは実がしっかりしていいて、頭から葉が出ていないものを選びます。
葉が出てしまうと、栄養はどんどんそちらに流れてしまうので、新芽が出ているものは避けたほうがいいです。
あまりに大きなものは火が通りにくいので、3センチほどのこぶりなものを選ぶと使いやすいです。
材料<2人前>
- ビーツ・小ぶりなもの4個
- お酢・小さじ1
- ヨーグルト(注6)・大さじ2
- ココナッツ・パウダー(注7)・大さじ1
- 塩・適量(親指・人差し指・中指でふたつまみ〜)
- 胡椒・適量
道具
- 鍋
- ヘラまたはカレースプーン
- 計量スプーン
- ボウル
ビーツはよく洗い、皮ごと少し多めの水を張った鍋に入れて、火をつけます(注8)。1時間ほど茹でるので、水は多めの方がいいです。
ここに小さじ1のお酢を追加して、ビーツの色が綺麗に出るようにします。
お湯が煮立ったら火を弱火に落とし、小一時間ほどコトコト煮ます。
竹串や鉄串で刺してみて、ちょっとかたいかな…というところで火を止め、そのまま触れる程度に冷まします(1時間〜)。
触れるくらいに冷めたら、手にとって皮をしごくと、ツルッとむけてきます。
手が赤くなりますが、洗えば落ちますのでご安心を。
皮がむけたら、一口くらいに乱切りにします。
切ったビーツはボウルに入れ、塩、胡椒、ヨーグルト、ココナッツ・パウダーを加えます。
ヘラかカレースプーンで大きく混ぜてやると、ヨーグルトがピンクになって来ます。
全体がよく混ざったら10分くらいおくと、さらに色が強くなります。
これでできあがりです。
ビーツの赤で染まったピンクが鮮やかに出ます。
パッと華やかな色合いは、女性にはとってもウケがいいですよ。子どもさんも「これなぁに?」って興味を持ってくれます。
美容と健康によく、見た目も可愛いビーツサラダ、ぜひお試しくださいね!
もし、ビーツを下茹でする時間がなかったら、水煮の缶詰を使ってもできます。少し色合いが淡くなりますが、レモン汁を少し加えるなどして、色がよく出るようにしてみてください。
この葉っぱももちろん、食べられます。
ビーツは実よりも葉の方に鉄分が多いので、葉付きのものを手に入れた時にはぜひ、調理して食べてください。
少しかたいので、軽く湯がいてからナムルやマリネにすると美味しいです。
胡麻和えや白和えにするのもおすすめです。
注2
葉酸とカリウムが多いため、「美容にいい」とされています。
また、この葉酸は胎児の成長にも欠かせないものなので、妊婦さんにはおすすめしたいお野菜のひとつです。
食べた時に甘いと感じるのは、ショ糖が多く含まれているからです。
注3
「NO 3(硝酸塩)」は口腔内の細菌をきっかけに変化が始まって「NO」になります。
注4
赤ビーツは実を切ると濃い赤の汁が出るので、調理時には洋服につけないように注意してください。まな板や手も染まりますが、これはすぐに洗えば落ちます。
この時、レモンや酢を使って洗うと、脱色効果がよくなります。
この濃い赤の色素は「ベタシアニン」。抗酸化作用があるとされています。
黄色いビーツの色素は「ベタキサンチン」。
注5
このビーツを使う代表的なスープが「ボルシチ」。あの赤い色はビーツの色です。
しかしながら加熱し過ぎると色があせてしまうので、下茹でしておいたものを仕上がり間際に入れるのがコツです。
注6
ビーガン対応にしたい場合は、豆乳ヨーグルトを使用してください。
わたしは今回、ゴート(山羊乳)ヨーグルトを使いました。
ゴートヨーグルトは脂肪球の大きさが小さいために胃の中で蛋白の凝固が優しいのです。そのため、比較的楽に消化吸収ができます。
また、タウリンも豊富に含まれていて(牛乳の20倍)、肝臓の強化に役立ちます。カルシウム、カリウム、ビタミンB2、ナイアシンも牛乳より多く、ミネラルバランスに優れています。
独特の匂いは、現代の製品ではほとんど感じられません。やや酸味のあるヨーグルト、という感じです。
注7
注7
ココナッツ・ファインとも呼ばれますが、細かな粒状になった、乾燥ココナッツです。製菓用で販売されていることが多いです。
完全な粉状のものではなく、小さな粒のものですのでご注意ください。
もしも見つからなければ、細長い形状の「ココナッツ・フレーク」でも構いません。この場合は、少し包丁で細かくしてから使うと歯ざわりよく仕上がります。
このお料理の他、パンやお菓子に混ぜ込んだり、サラダのトッピングにしたりで食べられます。インドカレーにちょっと追加しても面白いですよ。
注8
写真では材料で紹介した量より多いビーツが入っていますが、これは余ったぶんを別の料理に使うつもりだからです。
小一時間ほどの下ごしらえが要るので、いつも少し多めに茹でます。手間もエネルギーももったいないですから、一度にやっちゃいます!
余った分は煮汁ごと冷蔵庫で保存すると、「ビーツの水煮」として3〜4日は問題なく食べられます。