No.3 こんなの食べてみよう!「フェンネル」
季節は夏、ファーマーズ・マーケットにも夏野菜が揃ってきて、お買い物も料理も楽しい時期です。
この季節の野菜は見た目が美しいだけじゃなく栄養もたっぷり、お値段も手頃で非常にありがたい存在です。購入したフレッシュなお野菜は、とにもかくにもすぐに調理して、お味を楽しむ、または封じ込めるのが大事!
でも、手間はそんなにかけなくても大丈夫。
ちょっと焼いたり煮たりするだけで、時にはそのまま、塩や簡単なドレッシングで食べるだけでも充分です!
今回は「すぐに使える封じ込め技」と、スーパーなどでも見かけるけど、今ひとつ「どうしていいかわからない」野菜のひとつ…「フェンネル」をご紹介しましょう。
甘くさわやか、かつ個性的な香りの野菜(注1)です。
フェンネル=ウイキョウ(茴香)は、地中海沿岸が原産の野菜ですが、日本には平安時代から入って栽培されているものです。薬用、食用、観賞用とあります。
主には種をスパイスや薬として利用しますが、「フローレス・フェンネル」と呼ばれる種類は、株の部分を食べる「野菜」として、アメリカでもよく栽培されています。
「フェンネル(Fennel)」の他「アニス(Anise)」と呼ばれることがあり、フランスでは「フヌイユ(Fenouil)」、イタリアでは「フィノッキオ(Finocchio)」と呼ばれます。
夏の終わりや冬のはじめに、玉葱のようにまんまるになった株がよく売られていますが、これをスライスしてサラダに、ローストして、パスタの具として、またはスープに入れたりと、個性的な香りを楽しみます。
今回、買い求めたのはまだちょっと若い感じの、細い株です。
今年は冬が長かったため、春から夏になる時期にトライステート周辺の野菜の生育が約1ヶ月ほど遅れていたのですが…そのせいもあるのか、この時期にはプックプクの株も、今年はまだちょっとスリムです。
この、株の上の方についている「茎&葉」は、もちろん食べられます(注2)。
今回はこのフェンネルをシンプルにローストしてみます。
野菜のお味の「封じ込め技」というわけです。
今回のお料理に使うのは、このハーブ二種類。
タイムとオレガノです。
材料
(アペタイザーサイズ2人前)
- フェンネル(ひと株)
<オプションとして、パプリカ半個、ズッキーニ小1個など> - ハーブ(片手にのる程度・1杯(注3))
- 塩・小さじ1/4
- オリーブオイル・大さじ3
- 胡椒・少々
- パーチメントペーパー・適量
まずはオーブンを190℃(380F)に予熱します。
フェンネルは茎の部分を切り離し、外側のかたい部分を剥いて外します(注4)。
綺麗にした株は四つ割りに。
まだ若い株なので縦長ですが、最盛期になると玉葱のように丸い株になって、形状がかなり変わります(注5)。
ハーブは茎から丁寧に葉っぱを外してやります。
茎は野菜ブロスの材料になりますよ(注6)。
みじん切りにして、少し大きめのボウルに移します。
塩、胡椒、オリーブオイルを入れます。
そこに、四つ割りにしたフェンネルをペーパータオルで丁寧に水気をとってから入れ、手でハーブ&オイルをなじませていきます。
株の根本にもオイルが入るように丁寧に、全体をよくなでつけます。
前回同様、今回も「手」は大活躍!
丁寧な仕事ができるので、ぜひ手を使ってやってみてくださいね。
天パンにパーチメントペーパー(オーブンシート)を敷き、その上にハーブ・オイルをまとった野菜をのせていきます。
このハーブ・オイルの残りは、他の野菜にも使えます。
どうせオーブンを使うなら、使い回しのきく野菜も一緒に調理しちゃいましょう!
夏場にオーブンを使うのはちょっと暑苦しいですけども、野菜を一度に調理してから保存しておけば、冷たい状態でも食べられるので、時間がある時にまとめてやると便利です。
冷蔵庫で保存すれば2〜3日はもちますし、冷たくても美味しく食べられます。イタリアンな前菜としても、冷たいパスタにのせたり、付け合せとしてメインに添えたり…アレンジは自由自在。
今回は、細めのスィートペッパーの4つ割、エアルームきゅうりの四割(半個分)を追加しました。
素材がバラバラの時は、厚みや大きさを揃えるように準備すると、焼きムラができません。
つまり、かたいものは小さく、または薄めに、柔らかいものは大きく、または厚めに…という具合です。
が、フェンネルは基本的にかたい野菜ですので、お供の野菜が柔らかい時(ピーマンなどの、果肉が薄い野菜の場合)は、先にフェンネルを10〜15分くらい焼いてから、残りを一緒にしてください。
わたしはフェンネルのかたい歯ごたえも好きなので、全部を同じ時間で焼きました。
フェンネルだけなら、180℃(370F)25〜30分でOKです。
まずは25分焼き、できあがりを確かめてから追って焼くと失敗が少ないです(注7)。
目安は、素材の先っぽが少しこげたり、焼き色がついた感じです。
この焼き時間で、ほとんどの野菜には火が通りますので、後はお好みで調整してみてください。
さて、できました。
ハーブみじん切り+オリーブオイルをまとわせて焼いただけなのに、何だかすごく仕事をした感じに見えるのも、この野菜ローストのいいところ。
おもてなしにつかうなら、前日に準備しても大丈夫です。
シンプルな風味のローストなので、使い道は色々です。
このハーブみじん切り+オリーブオイルをまとわせて焼く…というのは、全シーズン使える調理法でもあります。
野菜が半端に余った時など、この方法でまとめてローストしておけば、半端野菜も「具だくさんの野菜ロースト」に変身!!
おろしたチーズをささっとかけたりしたら、立派な一皿です。
和風の素材、れんこんやごぼうも、薄切りにして使うと合いますよ。
根菜類などのかたい素材の場合、軽く(2〜3分)下茹でしてからローストするという手もあります。
ただし、水が出る素材(トマトなど)と水が出にくい素材(いんげん、キャベツ、根菜類など)を同じトレーでローストするかどうかはお好みで(注8)!
夏のディナーもこれで充実!
ワインにもビールにも合いますよ。
注1
種であるスパイスも同じ系統の香りで、青臭いながら甘い、独特の香りです。カレー、野菜のロースト、時にはデザートにも合わせたりします。注2
ただし、茎はかなりかたいことが多いです。
食べられそうな柔らかさなら、スライスしてサラダに混ぜたり、スープに入れて煮たりして食べます。葉っぱはこんなふうに茎から摘んでおけば、飾りやサラダに混ぜたりして使えます。
注3
今回はタイムとオレガノを使っていますが(目安として、それぞれを二枝くらい)、バジルでもマジョラムでもミントでも、お好きなものを使って下さい。ハーブなんか全然ない、という時でも、パセリがあれば十分です!
注4
この外側の部分の綺麗なところは、薄くスライスしてサラダにしたり、少し時間をかけて煮込んだりすると充分に食べられます(トマトソースで味付けしたり、スープの具にしたり、色々できます)。一番外側の、ちょっと汚れた部分も、洗ってから煮込み料理を作る時の下ごしらえとして入れると、香り付け&臭み消しにもなります。
注5
プックプクの株はこんな感じです。
今回のがまだ成長途中のスリムな株だということを、おわかりいただけます。photo credit: aurélien. via photopin cc
注6
以前にも書きましたが、オーガニックでない場合は、よーく洗ってから使ってくださいね。注7
焼き加減は、鉄串や竹串を、かたい根本などに刺して確かめます。
スッと入れば柔らかくなってますが、少し抵抗がある時はまだかためなので、少し焼き時間を延長してください。注8
水が出やすい野菜と出にくい野菜を一緒にローストすると、トレーの野菜が水気の多い野菜の汁にひたってしまうのですね…。
それはそれで美味しいのですけど、汁にひたった野菜はいまいち…という場合は、一緒にしないほうがいいです。
ぷちぷちコラム「フェンネルのサラダ」
茎や外側のかたい部分、もしくは今回ローストした株の部分は、サラダにも出来ます。
スライスした後は(スライサーを使うと便利です)、氷水につけてパリっとさせると美味しいです。
しばらくつけた後、手でさわってパリっとしたら、サラダスピナーなどでよく水をってドレッシングと和えます。
摘み取った葉っぱも、一緒にしてみてください。
オリーブオイル+白バルサミコ+塩胡椒で和えただけでも美味しく食べられます。肉や魚の付け合せにもぴったり。
他にも、オリーブオイル+レモン+塩胡椒のベーシックなお味もよし、このフェンネルの香りによく合う柑橘類(オレンジ、グレープフルーツなど)を具にして足してもまた別の美味しさです。
ラディッシュの薄切りなんかも、よく合いますよ。
彩りも綺麗で可愛い感じになります。