No.11 番外篇:アーミッシュ・カントリーを訪ねて

今回はちょっと番外篇として、ペンシルヴァニア州にあるアーミッシュ・カントリーを訪ねた時の話をします。

アーミッシュは、ペンシルヴァニア州や中西部、そしてカナダのオンタリオ州などに居住している、ドイツ系の移民(一部にオランダ系も含まれます)の「宗教集団」と呼ばれている人々です。

アーミッシュは移民当時の生活を守って農耕や牧畜を行い、自給自足で生活をしています。基本的に当時の生活様式を守るために電気は使わず、一般的な通信機器なども保持しません。

一部には風力や水力(水車)による蓄電式の電気を使う家庭もあるそうですが、それは馬車のウィンカーを充電したりなど、ごく一部に利用するためだとか(注1)。

ハリソン・フォード主演の映画「刑事ジョン・ブック」でアーミッシュの存在を知った方も多いのでは。

わたしが訪ねたのはペンシルヴァニア州のランカスター近辺です。
NYCからは車で3時間ほどかかりました。

近代以前の道具を使用するので、農耕もミュールというロバと馬の交配種を使い、木製の鋤で耕す姿を見かけます。
自動車にも乗らず、一頭立ての馬車で車道を移動しており(注2)、滞在中に何回かすれ違うことがありました。

かれらが作った野菜や牧畜製品(牛乳、チーズ、玉子、加工肉、食肉など)は、「アーミッシュ・マーケット」と呼ばれる市場や、かれらが庭先や馬車用のガレージなどを利用して販売している「スタンド」で買うことができます。

アーミッシュの農作物は「近代化」していないため、農薬や化学肥料を使いません。認証こそありませんが、全てオーガニックなのです。
そのため、その美味しさには定評があり、人気もあります。

わたしがまず連れて行ってもらったのは、「アーミッシュの人たちのコンビニ」でした。
小さな商店で、薬草や精油などを含む生活用品から食料品までを売っているところです。

レジをしてくれるのはもちろん、アーミッシュの女性。

アーミッシュの女性は「ボタンは宝石である」という考え方から、ピンで止めただけの清楚な服を着用します(注3)。
髪は切らずにうしろでまとめ、カバーリングと呼ばれる白い帽子のようなものをつけて、まとめた部分を隠していました。

かれらの服は色や柄が全てコミュニティで取り決められていて、未婚・既婚、未成年・青年、もしくは年齢で色やスタイルが変わります。

この店で見つけたのが、わたしが平素に使っている「塩」
ユタ州で生産される「Real Salt」という製品なのですが、枕のような大袋で売っているのを見てビックリ!

後日に訪れたマーケットでも小分けで販売されていて、どうやらアーミッシュの人々のお気にいりのようです。

店の奥には大きな冷蔵コーナーがあり、野菜・乳製品・肉類・玉子などがありました。
店の中の棚には冷蔵庫を使わずに野菜を保存するためと思われるピクルス類乾燥させた穀類などが売られています(注4)。

とはいえ、売られている既成の食品の中には一般の人達が使うものも含まれていて、添加物入りのものもかなりありました。

次に向かったのは、ご主人が車に乗っていることから、おそらくメノナイトのご家庭。

大きなクーラーボックスの中に野菜やベリー類を入れて無人販売しているのですが、この値段がとってもお安いのです!!

写真のいんげんは一袋(500g以上あります)で$1.50!
紙袋いっぱいの、1kg以上はあるレッドスキン・ポテトも$1.50!!

トライステートあたりでは考えられないお値段です。

しかしながら、トライステート、もっと突っ込んで言うとユニオンスクエアのグリーン・マーケットと大きく違うのは、野菜の種類です。

売られているのは、昔ながらのトマト、きゅうり、いんげん、とうもろこし、ピーマン、ズッキーニ、ビーツ、じゃがいも、茄子、メロン、スイカ、黄桃など。

最近になって人気のある和野菜や、エアルームトマト、色の変わった新種のものなど、ユニオンスクエアあたりでみかける野菜は全くありません

近代化しない生活を送るアーミッシュには、必要のないものだからでしょう。


畑に付属している納屋を使って野菜を販売しているスタンド。
素朴な野菜が並びます。
これがまたどれも美味しくて、シンプルに調理するだけで驚きの美味しさでした!


道途に家畜を放牧している姿が見られます。馬の向こうにいるのは羊たち。
奥にある主屋には、一家が住んでいるのでしょう。
家は想像よりもずっと、市街でよく見るデザインのものが多く、アーミッシュ独特のお洋服たちが戸外に干されていることや、
馬車が置かれていたりすること以外からは見分けがつきませんでした。

翌日に行った、週に一度だけ開かれるという、アンティーク&ヴィンテージのフリーマーケットと併設されたマーケット「Roots」では、アーミッシュだけではなく、一般の人も野菜や加工品などを販売していました。

敷地内には動物を売っている別棟もあり、戸外ではフリーマーケットが開かれていて大賑わい。

一般の人の店も入っているため、「外から持って来ているもの」と「地元のもの」の見分けがつきにくい…とは、案内してくれた友人談。

確かにたくさんのお店があることもあり、玉石混交という感じで見分けにくいですが、基本的にアーミッシュが売っているお店で、季節のものだけを買うのがよいと思います。

先にも書いた通り、アーミッシュは「基本的な野菜」のみ作るようですので、例えばアーミッシュの店で売っている「Japanese Eggplant(日本茄子)」は、かれらが作っていない=外から仕入れたもの…と判断できます。


このお店は一般の人のお店。やっぱりお値段はかなり安いです。
アーミッシュには基本的にカメラを向けられないので、アーミッシュのお店の写真はなしです。

大きな屋内マーケットには、アーミッシュの家具やキルトを売るお店(注5)、パン屋、瓶詰め(ピクルスやマスタードなど)専門店、はちみつ専門店、サンドイッチ屋、チーズ屋、お菓子屋…果ては文房具屋まで、色々なお店がひしめき合っています。

また、週に一度の開催+夏休みということもあって、人もいっぱい!
屋内はすれ違うのも一苦労な感じですし、外では用意されたピクニック・テーブルで食事をしている親子連れをたくさん見かけました。

やはりアーミッシュが目の前で作ってくれるフードベンダーは人気がありましたが、作っているのはどう見ても、よくある細長い白パンを割ってホイップバターを塗り、野菜や加工肉などの具を挟んだ「普通のサンドイッチ」で残念(注6)。

たくさんのベンダーがいますし、建物がクラシックな感じにまとめられていることもあって、マーケット自体は楽しめます。
でも、個人的にはスタンドを訪ねて買いに行くのが一番、楽しかったです!

アーミッシュの野菜は、素材の味がしっかりしているのでシンプルな調理が一番。

友人宅で作って好評だったトマト・パスタの作り方を、おまけでどうぞ。実は、前回の「レタスのホットサラダ」の応用編です!

パスタの種類はお好みですが、ショートよりロングの方が合うと思います。

フレッシュ・トマトのパスタ

材料<1〜2人前>

  • パスタ・160〜200g
  • 完熟トマト・中程度を2〜3個
  • にんにく・1〜2かけ
  • オリーブオイル・大さじ2
  • ・適量(親指・人差し指・中指でふたつまみ〜)
  • 胡椒・適量

道具

  • 小さいフライパン
  • ボウル
  • パスタを茹でる鍋
  • パスタを湯切りするざる

鍋に湯を沸かし、一つかみの塩(分量外)を入れて塩湯を作ります。

トマトはざく切りにして大きなボウルに入れ、塩を全体にまぶしておきます。
にんにくはみじん切りに。

グラグラにわいたお湯でパスタを茹で始めたら、小さいフライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて、弱火にかけます。

前回もコツとして紹介しましたが油が冷たいうちから、にんにくを入れるのがコツです!

フライパンを適度にゆすって全体に熱が回るよう、そして、油にはにんにくの香りがよく移るようにしてやります。
火を強くせず、ゆっくりと。

オイルがサラサラになり、にんにくスライスがきつね色になったら火を止め、そのままトマトの入ったボウルにそのままあけます。

トマトにあたった時に「ジュ〜〜ッ」と音がしたら大成功
茹で上がったパスタを和えて、お好みで胡椒を挽いたらできあがり。

ちぎったバジル、ソテーした野菜、削ったチーズなどを加えても美味しくできますが、トマトが美味しい時期には、あえてシンプルにトマトだけでやってみてください。

もちろん、アーミッシュのトマトではなくても、今の時期の完熟トマトなら美味しく仕上がります


注1
アーミッシュの中でも「メノナイト」と呼ばれる人々は、自動車や家電をつかうこともあるそうです。

注2
成人のみが馬車を使えるので、未成年はキックボードのようなものを使っているのを見かけるそうです。その理由は「馬車より速い乗り物に乗ってはいけない」からだそう。

注3
この女性は白いエプロンの方だったので、既婚女性と思われますが、この店、実はクレジットカードが使えるので、それなりに近代化したものに触れて良い層の方だと思われます。

階層によっては、生活を遵守するために通信機器などを一切使わない方々もいます。

注4
この「Chow-chow」というのは、いろんな野菜で作ったピクルスで、レリッシュとも呼ばれます。ズッキーニ、人参、トマト、玉ねぎなどが使われていました。

注5
家具については、雪に降り込められている間に、男性陣がコミュニティの中の家に集まって作るものだそうです。伝統的なスタイルのチェストやワードローブ、小引き出し、椅子などがありました。

対して、キルトは女性のお仕事
本来はアーミッシュ用のお洋服の端切れや古着を利用して作ったもので、非常に素朴で清楚な味わいのものとされていますが、マーケットで売られているのは現代風というか、もっと華美な感じのものでした。

注6
メリーランド州で行ったアーミッシュ・マーケットでは、アーミッシュが直々に調理している(カウンターの中が調理場になっていて、男性が調理しているところが見られるのです)ローストチキンを売っていて、大変な人気がありました。

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